東京のきつねが大阪でたぬきにばける!? 共通語だと思っていたのに方言だった?!

〜書籍『東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典』よりユニークな方言をご紹介〜

かつては “方言コンプレックス” などと言われ、隠す存在であった方言。
今では、人々の結びつきを強くしたり、地域色をアピールしたりするものとして、その価値が見直されるようになり、積極的に使われるようになっている。

この度、『東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典』という名のユニークな書籍が刊行された。
その中で取り上げているのは、その地域の人が方言だと思っていない「気づかない方言」「誤解されやすい方言」。
共通語と同じ語形でありながら、共通語では使わない意味で用いられるような語だけを集めたという。
転居した先や、旅行した地で、当然のように発した表現に、「えっ!?」と返される、そんな経験がある人も多くいるだろう。

それでは書籍からの一例を紹介しよう。

たとえば、「たぬき

・東京では、うどんであれ蕎麦(そば)であれ、「揚げ玉(天かす)」がのっていれば「たぬき」と呼ぶ。
ところが、大阪で「たぬき」を注文すると、甘辛く煮た油揚げをのせた蕎麦が運ばれてくる。
東京の「きつね蕎麦」が「たぬき」に化けてしまったのである。

・もともとうどんが標準的な大阪の食文化のなかで、甘辛く煮た油揚げをのせた「うどん」が「きつね」として食されてきた。
そこに標準から外れた蕎麦を使ったことで「たぬきに化けた」ととらえられたわけである。

・つまり、「きつね」と「たぬき」は、東京では具の違いであるが、大阪では蕎麦かうどんかの違いであって、具は油揚げと決まっているのである。

東京のきつねは大阪でたぬき
大阪の人が、東京で「たぬき」と注文して「そば? うどん?」と聞かれ、変なこと聞くなと思いながらも「そば」と言ってみたところ、出てきたのは揚げ玉ののった蕎麦だったなんて、悲しい出来事もあるだろう。

ほかには、こんな例。

背中、かじって

・山梨では、「背中をかじる」「頭をかじる」などのように「かゆいところをかく」の意味で使われる。長野・静岡の隣接する地域でも使う。

・共通語の「かじる」は「かたいものの一部を、少しずつ歯でかんでけずりとる」わけだが、「かゆい部分をけずりとる」という発想かもしれない。

・方言であることに気づいていない人も多く、東京に住む孫に「背中かじって」とたのんだら歯型をつけられたとの失敗談もある。

どんなにかわいい孫だとしても、背中に歯型をつけられたくはない・・・

 

また、こんな例も。

足、ながめれ

・青森・秋田・岩手などでは「長くする」、つまり「伸ばす」の意味で使われる。ただし、足を伸ばす場合に限って使われることが多いようだ。

・「足、ながめれ」と言われても、相手の足をじろじろと眺めていてはいけない。これは「足をくずしてくつろいでください」との意味を込めた心遣いなのである。

・明治時代初期の辞書の「ながめる」の項目には「伸ばす」の意味が記されている。現代の共通語では使われなくなった古い用法が方言に残っている例なのだ。

知らなければ「変なこと言う人だなぁ」と思ってしまう例だ。
今では方言でのみこの用法が残っているようだが、明治時代には共通語として使われていたものだったという。
そのほかにも、「今夜はだいてやるから、好きなだけ飲め!」(富山)や、「この服、少しきもいんで、べつの持ってきてもらえますか」(愛知・岐阜など)といった、共通語と同じ語形なのにまったく意味が異なり、知っているのと知っていないのでは印象が大きく変わる方言もある。

このようにユニークな方言をまとめた書籍の情報は以下のとおりだ。

本書では各地の「誤解されやすい方言」181語をあつめて、イラストもまじえ、ときには古典や文豪の用例なども引用し、詳しく解説。
語形の五十音順に掲載されているが、どのページからでも読むことができる。
巻末には、県名や地域名から調べられる地名索引や、共通語の意味からも探せる項目索引も収録したという。

発行元の株式会社三省堂は、
「活字の大きな見やすい紙面で、難しい漢字にはふりがなも付いていますので、中学生から大人までお読みいただけます。本書で方言についての理解を深めながら、方言のおもしろさをたっぷりと味わってください。」と語る。


■商品概要
書名:『東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典』
著者名:篠崎晃一 著
発行:株式会社三省堂
発売:2017年6月2日(金)より
金額:本体1,300円+税
URL:http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/books/gokai_hougen/


ここ秩父地域にも特徴ある方言が多々存在し、とても味があると感じている。
本記事の冒頭で『方言が人々の結びつきを強くし、地域色をアピールしたりするもの』表現しているのは、まさに同感。興味ある一冊だ。
記事:編集部

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