ダウンロード違法化の範囲拡大について、各業界からの意見表明続く

2月13日、文化庁・文化審議会著作権分科会はネット上に違法にアップロードされたものと知りながら、漫画や写真など、あらゆるコンテンツについて、ダウンロードすることを全面的に違法とする方針を報告書にまとめた。今、様々な関連業界で、その解釈について話題となっている。

クリエイターと読者をつなげるウェブサービス「note」と「cakes」を運営している株式会社ピースオブケイクもこの度、意見表明を行ったので、紹介したい。<以下、転載>

<ピースオブケイク意見表明>

1.将来のクリエイティブを阻害する可能性が高いこと、2.現在のクリエイティブを守るのにも有効ではなく、むしろ流通を阻害するデメリットのほうが大きい可能性が高いこと、の2つの理由で反対の立場を表明します。

noteやcakesを運営するピースオブケイクは、2019年2月13日に発表された文化庁の文化審議会著作権分科会の報告書について意見を表明させていただきます。

この報告書では、 著作権法のダウンロード違法化の対象範囲の拡大が提言されています。 とくに適用範囲を、現在の音楽・映像から、静止画やテキストを含む創作物全般に拡大するという点において、多くの識者、クリエイター、創作物を楽しむユーザーなどから批判や懸念が示されています。
ピースオブケイクでは、この報告書の見解に対し、1.将来のクリエイティブを阻害する可能性が高いこと、2.現在のクリエイティブを守るのにも有効ではなく、むしろ流通を阻害するデメリットのほうが大きい可能性が高いこと、の2つの理由で反対の立場を表明します。

わたしたちの考えは以下の通りです。

著作物に関連する法律である著作権法では、第一条で、法律の目的として、「文化の発展に寄与することを目的とする」ことを掲げています。

著作権法原文
(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

もちろん、文化の発展に寄与するためには、同じ条項に書かれているとおり、「著作物の公正な利用と著作権者の保護を図る」必要があります。しかし、それはあくまでも手段で、立法趣旨は「文化の発展」にあります。

そもそも、あらゆる創作物は、意識的にせよ無意識的にせよ、過去の創作物の影響を受けているものです。つまり現在の創作物は、過去のクリエイティブの資産の上に成り立っています。過去の創作物やクリエイターの権利はもちろん大事ですが、未来のクリエイターの自由な表現の可能性を担保することもそれと同等か、あるいはそれ以上に大事なことと私たちは考えます。

もしも、今回の報告書どおりに法改正がなされた場合、クリエイターやユーザーの行為が規制対象となり表現行為が違法となるリスクが増加します。それに対して意識的、無意識的に、萎縮することでコンテンツの創作や流通が阻害され、未来のクリエイティブの創作に悪影響がある可能性が高いと考えています。

また、これは未来のクリエイターのための話だけにはとどまりません。すでに創作物の権利を保有しているクリエイターにとっても、自分の創作物が流通されにくくなり、自分の作品が世に出て人々の目に触れる機会が奪われることになり、既存のクリエイターのためにもなりません。

またこれは、コンテンツを楽しむ側のユーザーにとってもリスクがあります。例えば、多くの人が日常的にやっているメモ代わりにスマホ画面のスクリーンショットを撮って保存する行為や、ウェブ上のテキストをコピー&ペーストする行為も規制の対象となる可能性があり、気軽にウェブ上のコンテンツを楽しむことができなくなります。たまたま撮ったtwitterのスクリーンショットにアニメのアイコンが写り込んでしまった場合も、処罰の対象となる可能性さえあるのです。

著作権法の立ち位置は、あくまで表現の自由に従属するものであり、ダウンロードの違法化は限定的であるべきです。産業サイドの一方的な事情を優先にして、クリエイターの創作を阻害したり、リスクを押し付けるようなことがあってはなりません。

我々は、著作権法とはあくまでクリエイターと創作を守り、促進するためのものであると考えます。

以上のとおり、 文化審議会著作権分科会の今回の報告書は、創作活動を行い、続けていくクリエイターはもちろん、創作物を保護される側のクリエイターや創作物を楽しむユーザーのためにもならず、文化の発展に寄与するという著作権法の目的から逸脱したものであると考え、ピースオブケイクでは規制対象範囲の拡大に懸念と反対の意見を表明いたします。

記事・転載:編集部

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