蒸し暑い日本、クール・ビズの風は都(みやこ)から吹いてくる

~人口10万人当たりの業種分類「うちわ・扇子」登録件数のトップ3は京都府、香川県、徳島県~

NTTタウンページ株式会社(東京都港区、代表取締役社長:岡田 昭彦)は、タウンページデータベース(職業別電話帳データ)を活用してさまざまなマーケティング情報を提供しており、自社が運営するタウンページデータベース紹介サイトでは、毎月独自の都道府県ランキングを発表している。
第70回のテーマは、「うちわ・扇子」に関するランキングとのこと。
まさにこれからの必須アイテムとして興味深いので紹介したい。

エアコンが当たり前になった現代にもかかわらず、うちわや扇子を愛用する人は多い様だ。
盆踊りや花火大会のお供としてだけでなく、スポーツやアイドルの応援にもうちわは欠かせないし、扇子は落語、日本舞踊、茶道など日本の伝統文化にも登場し、重要な役割を果たしている。
ささやかな涼をもたらしてくれるだけでなく、文化的にも背景の多い道具であることがわかる。
今回は、新しい風を届けてくれる「うちわ・扇子」に関するランキングである。

 

■「風」を吹かせるだけじゃない、扇子はクールジャパンの元祖?
温暖化の影響か、猛暑日が増えている日本の夏。
手軽に涼をとれる道具としても、夏の風物詩としても、うちわや扇子は活躍している。
歴史が古いのはうちわで、遠くエジブトや古代中国にまで起源は遡る。
当時は風を送るだけでなく権威の象徴的な側面もあったようだ。
飛鳥時代に日本に伝来したうちわが、平安時代に折りたためるように改良されて扇子になった。
つまり、扇子は日本で誕生したものなのだ。
扇子は源氏物語にも登場。
和歌を書いて届けたり、花を載せて贈るなど、当時の人々の想いを伝えるコミュニケーションツールとして活用されていたことが伺われる。
日本生まれの扇子は大航海時代に中国から世界に伝わり、ヨーロッパでも大活躍した。
上流階級の淑女のファッションアイテムになり、オーストリアの皇妃エリザベートを始め、扇子を手にした淑女の肖像画が数多く残されている。
そして、コミュニケーションツールとして使われたのは、西洋でも同じであった。
気になる男性の前でわざと扇子を置き忘れ、届けてもらうことで関係を深める小道具にしたり、口にしにくい想いを伝える「扇ことば」も誕生し、19世紀にはその手引書が出版されたとか。
道具を折りたたんで使いやすくするという、いかにも日本らしい発想から生まれた扇子は、世界で最初に認められた「元祖クールジャパン」かもしれない。

■西日本に多い、業種分類「うちわ・扇子」
「うちわ・扇子」に登録している件数は、この10年で730件から452件と減少傾向に。

<図1>業種分類「うちわ・扇子」の登録件数推移(2007年~2016年)

人口約10万人当たりの登録件数でみると、1位は京都府(3.14件)、2位は香川県 (3.07件)、3位は徳島県(0.93件)になった。

<図2>業種分類「うちわ・扇子」の登録件数による都道府県ランキング(2016年)

1位の京都府は、扇子を生み出した平安の都。
文化の中心地として香道、茶道、舞踏なども発展し、それに伴いそれぞれに用いられる扇子も作られるようになった。
そのため、京扇子は様々な種類があり、金銀泊や漆、蒔絵が施されたものは美術工芸品としても評価されている。
1200年の歴史があり、文化や美意識を取り入れてきた京扇子は、現代でも日本人の暮らしに涼と彩を添えている。

2位の香川県、3位の徳島県はともに四国。
古くから「伊予竹に 土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば 讃岐うちわで 至極(四国)涼しい」と歌い継がれているように、竹は伊予(愛媛県)、紙は土佐(高知県)、ノリは阿波(徳島県)と、良い材料が四国内で入手できることが強みの一つとなり、発展したのであろう。
特に香川県の丸亀市は全国のうちわ生産量のおよそ9割を担い、平成9年5月に国の伝統的工芸品に指定されている。
江戸時代の初期には金毘羅参詣の土産物としてうちわの製造を始め、丸に金の文字が入ったインパクトの強いデザインと表面に柿渋を塗った丈夫な作りで、火を起こすのに適していると重宝された。

徳島県では、藩政時代から吉野川の洪水を防ぐ為、川沿いに真竹の植え付けを奨励したことから、真竹を利用した産業が発達した。
和紙と藍染めの伝統産地でもあり、うちわや扇子製造に生かされている。

■心地よい風は、時代を超えて
環境への配慮から、環境省の呼び掛けで室内の温度設定は28度とやや高め。
身体を動かす人には汗対策は欠かせないが、インターネットサービスの「@niftyニュース」が2016年8月12日〜8月18日に行ったアンケートによると、汗対策グッズとして選ばれているのは1位がハンカチ・タオルで、2位にうちわ・扇子・扇風機がランクイン。
制汗剤や吸水素材の下着などで汗対策も進化しているが、やはり肌に直接風を当てる心地よさは、古今東西変わらないようだ。

<図3>汗をかいた時、役に立つなと思うもの・汗対策グッズは?

うちわは販促ツールとして配られるなど安価な輸入品も増えたため、ポリプロピレン製が大半を締めている。
だからこそ、昔ながらの工芸品である竹と和紙でできたうちわで扇ぐと、その風のしなやかな心地よさに驚かされる人が多いそうだ。
また、使うたびに優雅な気持ちになる扇子は人前で使うことも多いため、持つ人のセンスが問われるものでもある。
そろそろうちわや扇子が恋しくなる季節。
今年は職人の作った伝統的なうちわや扇子で、爽やかな風を起こしてみてはいかがだろうか。

記事:編集部

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